2022/12/19
Q

プラスチックの黄ばみの原因は?

A

高分子だからこそ起きる?化学変化が原因の一つだった

前回の記事で解説した通り、私たちの身の回りはたくさんのプラスチック製品であふれています。そんなプラスチック、たとえばエアコンのリモコンまたはスマートフォンのクリアケースなど・・・・ふとしたときに「黄ばみ」が気になりませんか?プラスチックも接着剤も高分子。高分子のエキスパートであるスリーボンドの研究開発員がプラスチックの黄ばみの原因と、対策方法について解説します。

プラスチックが黄ばむ原因

さまざまな原因が考えられますが、大きく以下の3つと考えられるでしょう。

原因1:プラスチックに汚れが付着している
食べ物の油やたばこのニコチンなどの汚れが付着し、黄ばんで見えているケースです。この場合、プラスチック自体が変化しているわけではないので、比較的黄ばみを落としやすいでしょう。

原因2:プラスチックに含まれる添加剤が化学変化を起こしてしまう
添加剤が紫外線などの外的要因によって化学変化して黄ばんでしまうケースです。
前の記事で説明した通り、プラスチックは「ポリマー」という高分子化合物が複雑に絡み合った巨大な高分子材料です。しかし、プラスチックはポリマーのみで形成されているわけではなく、様々な添加剤を混ぜて作られています。

少し分かりにくいのでカレーに例えてみましょう。カレーのメインの具材は野菜やお肉ですが、これだけではカレーになりませんね。様々なスパイスや調味料が入ってはじめてカレーが完成します。プラスチックも同様で、ポリマー(野菜やお肉)だけでなく「難燃化剤」や「酸化防止剤」などの添加物(スパイスや調味料)が入ることで完成します。

このように、添加剤はプラスチックを作る上で欠かせない材料ですが、プラスチックが黄ばむ原因の一つともなります。ただ、原因2の場合、ポリマー自体は変化していないため、黄ばみを取ることは可能です。

原因3:ポリマー自体の構造が変化してしまう(経年劣化)
ポリマーの二重結合が空気中の酸素と反応して、黄ばんでしまうケースです。
一般的なプラスチックにはABS樹脂というポリマーがよく使用されています。ABS樹脂には酸素とよく反応する二重結合が多く存在します。そのため、この二重結合が空気中の酸素と反応し、ABS樹脂(ポリマー)自体の構造が変化することで黄ばんでしまいます。
原因2、原因3もプラスチック自体が変化して黄ばみますが、原因3の場合、ポリマー自体(カレーでいう野菜やお肉)の変化が原因です。この場合、原因2と違ってメインの材料が変化して黄ばんでいるため、黄ばみを取り除くのは非常に難しくなります。

原因別に対策方法を知ろう!

対策1:プラスチックに付着した汚れが原因の場合
メラミンスポンジに水を含ませて汚れをとってみましょう。なかなか汚れが落ちない場合には、中性洗剤や重曹を使って汚れを落としてみましょう。それでも難しい場合には、除光液など溶剤も有効です。ただし、これらはプラスチックが溶けてしまう可能性がありますので、十分に注意してかならず少量を試してから、実行しましょう。

対策2:プラスチックに含まれる添加物の化学変化が原因の場合
漂白が効果的です。漂白剤にプラスチックを浸けて紫外線に当てると、酸化防止剤と難燃剤など添加物による黄ばみを取り除くことができます。ただし、これらは水に浸けてもよいものだけが対象です。

対策3:ポリマー自体の構造が変化している(経年劣化)の場合
この場合は、まず黄ばみを落とすのは難しいと考えていいでしょう。劣化させないのではなく、あくまで劣化のスピードを「遅らせる」予防策をご提案します。
原因3で説明した通り、ポリマー自体の構造変化は酸素とポリマー中の二重結合が反応することで引き起こされます。そのため、コーティング剤やカバーをつけて空気との接触を防ぐことで、黄ばむスピードを遅らせることが期待できます。

また、これは余談ですが、プラスチックを開発するときに、二重結合を持たないポリマーを用いれば、黄ばみにくいプラスチックができるかもしれませんね。

プラスチックが黄ばむ要因・対策・予防策は分かりましたか?日頃からできる簡単な予防策は「日光に当てないこと」、「カバーをつけて空気との接触を防ぐこと」です。何となくこれらの対策をしていた方もいるかもしれませんが、原因をきちんと知ることで、その重要性が分かりますね。ただ、残念ながら日陰でも紫外線は届いています。また、酸素との接触を完全に防ぐことはできないので、時間が経つにつれプラスチックが黄ばむことは仕方のないことです。黄ばみが目立ってきたら、できる範囲で対策を試してみて下さいね。

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